唄:みとせのりこ
窓辺の彼の机には 小さな銀色の写真機
レンズは覚えてる どんな日々も
青年の日の瞳には 出逢った頃の可愛いひと
柱の木の香り 緑の庭
聞こえる幼いはしゃぎ声 白い仔猫
Ah 一緒に 数えた夢や(遠い国から)
Ah あの子が はばたく朝や(海を渡って)
Ah 真っ直ぐ 距離を結んで(街の店先)[悲しい歴史や]
Ah 愛しい 景色を写した[明るい希望の時代を]
逃げてゆく 露光追い掛けて 日暮れてく 空色
現像液の染み込んだ 酸っぱい匂いの棚の中
重たい三脚と 黒い帽子
一枚落ち葉の挟まれた 辞書とルーペ
Ah 異国の 文字を刻んで(電車通りを)
Ah 静かに 輝くクローム(彼に抱かれて)
Ah 毎日磨かれながら(家に帰った)[小さな暮らしや]
Ah 移ろう 季節を刻んだ[豊かに変わった町並み]
一瞬の 記憶滲ませて 褪せてゆく 印画紙
いつまでも 忘れないように 大切に 永遠に
机の上で猫達が 陽射しに包まれてうとうと
巻かずに残された 青いフィルム
家族は微笑む 動かない時の中で