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金平糖ロマネスク

或る春のことだった

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それは或る春のことだった
星のまたたく夜だった
桜の下に並んで座って 宛てない夢を語り合った
少し腕が触れただけで おかしいくらい火照った
帽子で隠れた貴方は
どんな表情をしていたんだろう

それは昔からだった
金平糖が好きだった
貴方と食べる金平糖はね
とても甘くて好きだった
少し洒落た喫茶店で懸命に背伸びをした
気付いて微笑む貴方は大人なのだと思った

それは或る春のことだった
ある麗らかな春だった
桜の花が静かに咲いては
黙したままに散っていく
少し低い好きな声が
“待たせました”と囁いた
幾度と諦めた言葉 震えるくちびる
“おかえりなさい 大好きな人”