黒い山羊が呟いた
「白線よりお下がりよ
鈍色電車通り去って」
隣りで猫が問い掛けた
「アナタは何処に向かうんだい
ここらも直に死んじまって」
赤の手首携えて
私一人 ふわり根無し草
錆びた水を飲み込んで
次の駅
またどうか どうか愛を
帰りの電車は何処にも無いわ
教えてダアリン ダアリン ねえダアリン
声が聞こえたような気がした
枯れた花は呟いた
「感情がない、感情がない、
心は憂い夕を吐いて」
蝉の泣いて墜ちる頃
電線が裂いた赤の下
立入禁止 蹴っ飛ばして
猛り影がドロドロと零れ出す
「見えない」と泣いて泣いて
私の想いを探しているわ
教えてダアリン ダアリン ねえダアリン
鳴らぬ電話の命は何処へ
茹る茹る環状線
ここには無い ここに終点は無い
左 左 右で鳴る
踏切りの音 カンカラリンドウ
カラスは言う カラスは言う
「あの頃にはきっと戻れないぜ」
「君はもう大人になってしまった」
またどうか どうか愛を
終わらない輪廻を
千切っておくれ
さよならダアリン ダアリン ねえダアリン
あの日私は大人になった
絶えず想う 二人一人
暮れ落ちた言葉は取り返せずに
さよならダアリン ダアリン ねえダアリン
クルクル回る環状線を
「一人憐れに歩めや少女」