明日には大人になる君へ
距離の最小単位を 時間の最小単位を “私”の最小単位を
細切れになった 映画フィルムの一コマのような静謐な場所で
自覚と無自覚の交差する三叉路で
初秋の風が撫ぜる歩道橋で
そこで待ち合わせしよう
明日には大人になる君へ
私は自死を否定しない 私は孤独を否定しない
私は“私”という定義の領分については懐疑的でありたい
社会における境遇と その惰弱な精神を拠り所にした
“私”と呼ぶには未成熟な自意識を
混同したりはしない
明日には大人になる君へ
これから来る人生の屈辱においては
報復を誓うのも無理はないのかもしれない
しかしながらその痛みが 君の尊厳に値するか知るべきだ
金品目的の窃盗犯は 私の書いた詩の一行だって盗めやしない
私はそれを尊厳と呼ぶ